どうもみなさん、おはこんばんにちは。
最近、CA既卒採用の年齢について多くのご質問を頂いています。
巷では30歳以上は採用されないとか、ESすら通過しないと言われるような都市伝説的な話も聞きますので、今回はCA既卒採用における年齢について、お話ししていきます。
なぜそんな噂が出回るのか
「30歳以上の内定者はいない」なぜそんな考えを持つ人がいるのでしょう。皆さんは募集要項をちゃんと見ていますか?そこに条件として「30歳まで」なんて文言ありますか?(パイロットは記載されていますね)
これは私の推測ですが、CAという職種に対する世間一般の考え方がそうさせているんじゃないかと思います。
CA=若くて容姿端麗な人がなるもの
そう思ってないですか?
容姿端麗ではなくとも、せめて若くなければならない、そういう認識が一般的になり過ぎてしまっている気がします。
実はこれ、半分正解、半分間違い。エアラインがどの層をメインに商売を行っているか、そこを理解することで話は見えてきます。
エアラインのメインターゲットは?
エアラインが主要顧客として捉えている人達、それはどんな人達だと思いますか?
ファミリー層でも高齢層でもありません。正解はビジネス層
例えば、羽田-伊丹線。
JAL/ANA共にドル箱路線と言われ、一日の運航本数は何便にも亘りますが、ほぼ毎日、かつ全ての便が満席近く予約されています。そのほとんどがビジネスマン(出張族)で、大体の人がマイルステータスを持ち、少し早めに空港に到着してはラウンジに入り、時間になったらゲートに向かう。エアラインとしては、ラウンジや機内サービスを充実させることで再利用意向を促し、上級顧客として囲う戦略を取っています。
そういう人が多頻度で乗ってもらえる、しかもプレミアムクラス(ANA)やファーストクラス(JAL)で乗ってもらえるからこそエアラインは利益を得ています。
国際線も同様、世界を飛び回るビジネスマンが多頻度でビジネスクラスに乗ってもらうことが収益の源泉。
ビジネスマンの立場になって考える
となると、大体の人は察しがつくと思いますが、そういう世界を飛び回るビジネスマン、会社の費用でビジネスクラスに乗れる人といえば、大体がある程度出世した40-50代の男性。最近は女性の割合も増えてきていますが、世界的に見てもまだ男性の方が多いのが実情。そういう人達にとって、どういうCAにサービスしてもらえば喜ぶと思いますか?
勿論色々な人がいるので一概には言えませんが、一般的にそういう人は若いCAを好む傾向にあり、企業としてもそこは定量的に分析し、事実、若いCAの方が顧客満足度が高いという結論が出ています。
どうでも良いような話に思うかもしれませんが、ここはマーケティング的に結構大事な部分なんですよね。ただ、その「若い」の定義は少し曖昧で、どこを境界にしているかはわかりませんが、感覚では40歳半ばぐらいかなと思います。
でも正直40-50代の男性にとって、20代も30代も大して変わりありませんし、会社としても30代はまだまだ若手と認識しているので、あなたが30歳を超えているからと言って、卑屈に思う必要はありません。
もしそんなことで悩む暇があったら、一回でも多く面接を受けて練習したほうが余程効果的だと本気で思いますよ。
ビジネスマンだけがお客さまではない
お客さま全員がビジネスマンであればそれで良いんですが、全体的にビジネス層が多いとはいえ、当然ながら路線によって顧客層は違うし、高齢者、ファミリー、若年層、様々な人が飛行機に乗ります。
人によっては、容姿年齢なんてどうでも良くて、とにかく高品質なサービスをしてくれることを望む人、親しみやすく話やすいCAを望む人、何もせず放っておいて欲しい人、そういうあらゆる顧客層に対応するため、エアラインとしても色々なCAを採用する必要があることは、もはや言うまでもないことかと思います。
つまり、いろんな属性のCAが必要で、いろんな年齢層のCAが必要であるということです。
まとめ
①CAの採用は30歳以上は無理、という根拠のない噂を真に受けない
②エアラインの主要顧客であるビジネスマンの立場になって考えれば、若いCAであることに越したことはないが、20代も30代も大差ないし、会社としても差を感じていない
③ビジネス層の割合は多いものの、実際は他にも色々な顧客層がいるため、それに伴い色々なCAが必要。若ければ良いわけではない
30歳以上のCA既卒採用受験者が気を付けること
ただし、一つだけ条件があります。それは、年齢相応の経験があるということ。30歳以上の方が合格しないと思ってしまう理由は、恐らく全てここに該当するんじゃないかと思うくらい。
CAの既卒採用は、必ずしも前職がCAである必要はなく、未経験でも全く問題ありません。ただ、30歳以上の受験者は、他の20代の人達と同等に考えてはいけません。
経験は年齢に比例するという考え方
例えば、Aさんは25歳、Bさんは32歳。二人ともSPIの点数は同じ、1次2次の面接官の評価も同点、どちらか片方しか採用出来ないというとき、あなたならどちらを採用しますか?
長期雇用という観点では、若くあるほうが好ましいことは言うまでもありません。
一方、32歳の方を採用する理由はたくさんあります。
それは32歳としての経験、社会人としての経験の長さです。
既卒採用の元々の意義を考えてみてください。既卒採用=中途採用、経験者を採用し、費用や時間を掛けずに即戦力となる人を採用することを指します。
経験者というのは、何もCA経験者というだけでなく、社会人としての経験が豊富で、CAとしてすぐに活躍できるポテンシャルを有するという意味になります。
AさんよりもBさんの方が明らかに能力が高ければ、既卒採用において企業は必ずBさんを選びます。Aさんを選ぶ(若さを選ぶ)のは、あくまで条件が同じときだけに限るからです。
ここで言いたいのは、年齢に相応しい経験をアピールしてくださいということ。
これまでの経験を以て、CAとしてどういう能力を発揮してくれるか、面接官とのコミュニケーション能力の高さが求められますし、年齢相応の成熟した内容が求められます。
恐らく、ほとんどの30歳以上の受験者はここの認識が甘く、他の20代と一緒になってキャピキャピした憧れの気持ちで来る方が多く、年齢不相応な経験ということで落とされることが多いのではないでしょうか。
事実、今回の既卒採用でもそれが理由で何名も落としました。
とはいえ、特別な対策が必要なわけではありません。
これまで私がお伝えしてきた内容をしっかり実践して頂ければ、それだけで十分。既卒の方の優位性は、人から聞いた内容(インプットした内容)をアウトプット出来るようになるまでの時間が短い、知識の体現まで時間がかからないことにあります。
詳しくは以下記事を参考にしてみてください。
逆を言えば、そこをしっかり差別化できさえすれば、間違いなく採用されます。
私の会社にも34歳の方が採用されていますし、30歳で面接に来る方はゴロゴロいます。決して年齢だけが採用可否を左右するわけではありません。当たり前ですが、能力次第です。
年齢相応の能力・経験、CAへの適性をしっかりアピール出来れば、必ず採用されますから。
まとめ
CA既卒採用に年齢は関係ない!と言いたいところですが、これまでお話した通り、残念ながら全くないわけではありません。
20代よりも求められる能力・経験が高くなっているという時点で無関係とは言えませんよね。ただ、年齢を見ただけですぐに不採用とされることは絶対になく、そこはしっかり能力や適性を見て判断されています。
なので、32歳だからといって一律不採用ということは絶対にないので安心してください。
もしかしたら31歳や32歳に優秀な方がいるかもしれませんし、29歳はOK、31歳はNGと判断することに何の合理性もありません。
わずかいくつかの年齢の違いで優秀な人を採用しそびれることの方が大きな痛手だし、最初からその可能性を捨てるほど企業も愚かではありません。
30歳以上は採用され辛い、そういう根も葉もないネットの噂、落ちた人の恨み妬みに惑わされず、粛々と自分に出来る準備、行うべき準備に思考を向けてください。
補足:日系エアラインが抱える人材不足
ここで終わり、にしようかと思ったのですが、どうしても一つ伝えておきたいことがあったので、補足的にお伝えします。
それは、エアラインが抱える人材不足という問題について。
CAという職種はご存知の通りとても大変。特に何が一番大変かと言うと、体力的な面が最も大きい。
CAとして働いていると、航空性中耳炎や副鼻腔炎に羅漢するリスクが高まり、さらに国際線のフライトとなると時差の違いから睡眠時間が不規則となり、肌が荒れやすくなることや生理不順などにも繋がりやすいことがあります。
だからどうしても離職率が高く、それだけ人の入れ替わりが激しいので、毎年多くのCAを採用する必要性があります。
また、新卒だけでは品質を維持することが大変なので、既にCAとしてキャリアのある既卒を採用することで育成までの時間を短縮し、すぐに即戦力として活躍してもらいたいという意向があることから、近年CAの既卒採用というものが多く行われるようになっているという経緯もあります。
ですが、実は人材不足という点では、もっと大きな問題があるんです。
訪日外国人観光客の増加に向けた、国を挙げての施策
そこまで専門的にお話することはしませんが、エアラインが抱える人材不足という問題は、単に離職率が高く人材確保が大変というだけに留まりません。
これに追い打ちをかけるのが、訪日外国人観光客を増やそうという国の施策。会社としてはとても有難い話なんですが、来年度のオリンピックをはじめ、今後日本を訪れる外国人の増加は速いペースで増えることが予想されており、それに伴い航空需要も著しく増加傾向にあることは皆さんもよく知っていますよね。
観光立国に向けた諸準備
具体的に言うと、日本政府が目標とする訪日外国人観光客の数は、東京オリンピックが開催される2020年で約4,000万人、10年後の2030年で約6,000万人。
2018年の訪日外国人観光客数は3,000万人弱なので、オリンピックまでの一年であと1,000万人増やさなければなりません。ちょっと現実的ではない数字なのですが、国としては様々な施策を打っています。
例えば、羽田空港の発着枠増加、成田空港の発着時間延長、羽田空港着陸時の飛行ルート変更
発着枠やルート変更など、一民間企業ではどうすることも出来ない問題に対して、官民一体となって取り組み、日本の空港に着陸する飛行機の数そのものを増やすことで、訪日する外国人観光客の絶対数を増やそうと考えています。
なぜこうも日本が観光に力を入れるか言うと、中国の経済成長により、昔日本が発展した時の様な製造業の優位性が保てなくなってきたというのがあって、観光を新たな日本の産業として育成しようというところからですね。
エアラインにとって、実際に訪日外国人が増えることは収益を押し上げる意味でとても重要なんですが、一方でそういった施策に対してはエアラインとして事前にしっかり準備すること、環境を整えることが必要です。
将来に向けてエアラインがするべきこと
発着枠の増加など、国全体を上げて訪日外国人の増加に向けて取り組んでいるという話を踏まえ、エアラインが出来ることに目を転じてみましょう。
発着枠が増えると飛行機の便が増えます。便が増えれば、パイロットやCAが必要になります。一便あたりの人数として、パイロットは2名、多くとも3名ですが、CAの場合はその何倍もの数が必要です。
A380などの超大型機になると、現在は15名ほどですが、今後25名に増やすという話もあり、航空需要の増加と共に、CAは計り知れないほどの人数が必要となります。
CAを増やすことから話は始まる
飛行機の便を増やそうにも、安全要員としてのCAがいなければ、飛ばしたくても飛ばせません。しかもただ飛ばせば良いわけではなく、サービス内容について他社と凌ぎを削っているわけであって、サービスを疎かにするわけにはいきません。単純にドアの数だけCAがいればいいわけではなく、フルサービスキャリアとしての名に恥じない、最高のサービスを提供し、世界最高の評価を受けることがどの航空会社でも共通した目標です。
訪日外国人ということもあり、CAは外国人スタッフで賄うことも一つの選択肢ですが、日系エアラインは「我々は日本のエアラインである」という自負が強いので、やはり日本人の採用が主になるはずです。
そんなチャンスを目の前にして、32歳だからという理由で諦めては勿体ないと思いませんか?
皆が望まなくとも、航空需要の伸びと共に採用拡大は待ったなしです。いま就職・転職に失敗しても、諦めずに挑戦していれば、採用数の拡大と共に入社するチャンスは大きく向上すると思いますよ!
CAの年齢なんて気にしていられない時代が来る?
観光立国を目指す日本にとって、完全に年齢と関係のない世の中になるかもしれません。既にアメリカン航空などは、60歳CA未経験の人を採用したりしていますが、CAの社会的地位が日本とアメリカで全く違うことから同じにはならないにしても、少子高齢化の進む日本において、もはや年齢に気を遣っている場合ではなくなるかもしれません。
10年後の労働生産年齢人口は1億人を切り、7,000人を切ると言われています。
労働生産年齢人口とは、日本の全体の総人口に占める15歳~60歳までの割合ですが、20代から30代、40代となるともっと少ない人口となります。
その中で若くてピチピチな人ばかり確保するのは、ライバルが多くいる中で不可能。必然的に年齢に関係なく採用する時代が必ず来るはずです。
しかも、それは先の話ではなく、もうまもなく。
エアラインとしても、目の前に大きな航空需要があるにもかかわらず、指をくわえて見ているわけにはいきません。将来の少子高齢化を控え、必ず採用は前倒しで拡大していきます。
今は間違いなくその道中にあると思いますし、日本の考え方も間違いなく欧米化しているので、年齢にとらわれず、そして外野の声に惑わされず、チャレンジしてください。
これで本当に終わります(笑)