5月末、JALが採用中断を発表しました。内容と今後についてお話しますが、今回の発表について個人的に思うことを言わせてもらいます。
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JALの採用中断発表について思うこと

CA

どうもみなさん、おはこんばんにちは。

5月末、ANAに続いてJALも新卒採用中断について発表しました。
今回の発表、就活生にとってもJALにとっても、最悪のタイミングだと思っています。

なぜ最悪だと思うか、今回は文句を含め個人的に思うことを言わせてもらおうかと。

JAL新卒採用一時中断

とはいえ、発表内容と今後について軽くお話しておきます。

JALの2021年度新卒採用では、

業務企画職(総合職)事務系約40名
業務企画職(総合職)技術系約50名
数理・IT系約20
パイロット訓練生約80名
客室乗務職400名

JAL本体では約600名の採用予定でしたが、パイロット訓練生約80名を除く、500名弱の新卒採用が中断されます。
JAL本体以外のグループ各社の採用も全て中断。

新型コロナウィルスの影響を鑑み、今後の日程が決まり次第、改めて案内する。

発表にはこうありますが、採用が再開される見込みはあるのでしょうか。

採用再開までの道のりは長く険しい

以前お話した通り、ウィルスという目に見えないものである以上、その影響は長期に及びます。
現在では多くの会社で在宅勤務が推奨されていますが、
今回を契機にビデオ会議の有用性が広く認識され、サラリーマンからの出張需要は激減。

感染者数が沈静化し、仮に運休・減便状態が解消されたとしても、
飛行機に乗ってくれるお客さんが戻らない限り、エアラインの収益は元通りになりません。

その影響から、
ANAの2020年1-3月期連結最終損益は587億円の赤字、四半期としては2003年度以降最悪水準。
JALも229億円の大赤字。

ちなみに、1-3月って、緊急事態宣言が発令されるピーク前ですからね。
本格的に運休・減便される前の内容で、次の決算はより悪化した内容が予想されています。

エアラインの費用構造は、8割が人件費や航空機リースなどの固定費がメイン。
残り2割は変動費の燃油など。

つまり、何もせずとも人件費やリース代で毎月700-1,000億の莫大なお金がぶっ飛びます。

削減すれば良いじゃないかと思うかもしれませんが、
人件費の安易な削減は人材流出に繋がりかねません。
特に高年収と言われるパイロットは減額対象になりがちですが、
パイロット育成は長い時間を要し、人材不足に陥ったからといってすぐに補うことは不可能。

リースにしても、機動的に対応が難しいこともあって、
中々ここを削減しようという動きにはなりにくい。

エアラインがエアラインである限り、この様な費用構造は避けられず、
この莫大な費用を賄えるほどの収益を生み出さなければ、エアラインは赤字状態となり、最悪の場合、経営破綻もあり得るのです。

つい先日、タイ国際航空が経営破綻しましたよね。
4月には豪2位のヴァージンアトランティックも破綻。
JAL/ANAだって決して他人事ではありません。

こんな状況下において、新卒採用は再開出来ない。

あくまで個人的な見解ですが、私はそう考えています。

今後の予想

あくまで予想です。
いくらJAL/ANA社員だからといって、先々のことは誰もわからないので、参考程度で。

今回の新卒採用は中断ではなく中止
例年、新卒採用終了後の夏頃から既卒採用が始まりますが、これも中止

再開されるのは、早くて来年夏頃の既卒採用かと考えています。
或いは、既卒採用に代わって、新卒夏採用・秋採用ということもあるかもしれません。

エアラインに限らず、日本企業が従来の4月入社という形にとらわれず、
各社実施可能と判断したタイミングで採用を始めることもあり得ますね。

先々については、コロナがどこまで長引き、いつ頃からお客さんが飛行機に乗ってくれるようになるか次第。
あまりに不透明過ぎて何とも言えないのが実情です。

“一時中断、再開は今後の状況次第”

こう発表せざるを得ないことについては、仕方のないことかもしれませんね。

発表タイミングがこの上なく最悪

さてここからは、JALの採用中断発表の”タイミング”について、言いたいことをいくつか。

発表を受けて、皆さんこう思いませんでしたか。

なぜ今?
なぜこのタイミング?
もっと前から決まってたんじゃないの?

私がこのタイミングが最悪だと思う理由は主に二つ。

ANAから遅れること、約3週間後の発表

採用が出来ないことは、もっと早くからわかってたよね。
それなのに、なぜここまで発表が遅いのか。

最大の疑問がこれ。

ANAの発表は5月初旬。なぜANAはこの時点で決断出来て、JALは決断出来なかったのか。
ここまで決定が遅れることで、就活生にどれだけ悪影響が及ぶか、想像しなかったのでしょうか。

ANAの経営状況が厳しいことは以前お話しましたし、メディアで頻繁に取り上げられているので周知の事実。
かといって、JALが安泰というわけではありません。
ANAもJALも、等しく経営状況は厳しいのです。

先ほどお話した通り、金額の違いはあるにしても両社1-3月決算は過去類を見ない大赤字。
JALは多少ANAよりキャッシュを持っているぐらいで、JAL/ANAも大きな被害を受けたことに変わりありません。

特別ANAだけが苦しいわけではないし、
同じ状況に置かれた両社にも関わらず、なぜここまで発表タイミングに差が出るのか。

緊急事態宣言が発令されて約1か月、何してたの?

ホントそう言いたい。

ANAから発表があった時点で、JALも…と考えた方は多いと思います。
それでもJALから正式に発表があるまでわからないし、
実施となった場合に備え、面接に向けて準備していた人も多いはずです。

それが5月末、面接直前での中断発表。

これによって学生がどういう立場に立たされるか、JALはイメージ出来なかったのでしょうか。
もっと早く決定していれば、就活生にとって違う人生になっていたのかもしれないのに。

緊急事態宣言解除、直後の発表

緊急事態宣言の解除が5月25日
JALの採用中断発表は5月27日

緊急事態宣言解除の二日後に発表されました。

緊急事態宣言が解除されたからといって、すぐに採用が始められないことは、
エアラインに勤務している人であれば誰でもわかります。

まず運休・減便が解消される必要があり、仮に解消されても、
ちゃんとお客さんに乗ってもらい費用を上回る収益が出ないと、採用の予算が立てられず、見通しすら立ちません。

でもそんなこと、就活生がわかるでしょうか?
今回のJALの発表、そこまで理解した上で受け取る人がいるでしょうか。

就活生の通常の心理として、

  • なぜコロナの状況が改善しつつあるのに、採用中断なのか
  • 来年4月入社だし、状況が改善しつつある今、3密対策すれば実施出来るのではないか
  • ヤキモキしていた時間を返せ、これまで準備していた時間を返せ

そう思うのが普通かと。

そうなるとJALにとっても好ましくない。

毎年JALとANAは熾烈な採用競争を繰り広げ、
JALより(ANAより)一人でも多く優秀な人材を採用しようと、様々な駆け引きを行っています。

ANA志望者の方が多いと言われる今、今回の件でJALブランドが傷つくことにより、
益々ANAを志望する学生ばかり増えるリスクについて、JALは考慮しなかったのでしょうか。

ここまで発表が遅くなった原因

きっとJALの悪いクセが出たんですよ。

  • 意思決定の遅さ
  • 想像力の欠如

とにかくJALは意思決定が遅い、判断が遅い。
何をするにも遅く、コトが起こってから判断するもんだから常に後手後手。
おまけに想像力がないもんだから、考えたところで結果変わらない。
相変わらずプライドだけは高いから助けも求めない。

一般的によく言われる企業イメージは、

ANA:革新的、スピード感がある、チャレンジ精神、若者向け

JAL:保守的・官吏的、慎重、伝統、高齢者向け

概ねその通り。

ANAは常にスピード感を持って積極的に動くし、とにかくJALよりも先手先手で動きます。
新しく完成した訓練施設も、建設決定まで物凄く短期間、決定してからの着手も早い早い。

ANAは意思決定まで速く、スピード感を重視していて、

考えてから走るな、考えながら走れ

これをよく体現していると言えます。

一方のJALは、良く言えば慎重。

一つ一つの意思決定に時間がかかり、それが担当者の決断力の無さなのか、
単に意思決定までのプロセスが無意味に長いのか、どちらかわかりませんが、とにかく遅い。

JALをそうさせるのは、経営破綻の影響が大きく、何事も慎重にという意識が強いからで、
今になってもまだ “国民の税金で再起出来た” という重い十字架を背負っているからだと思います。

恐らく、JALがANAの様に大規模な訓練施設を作ろうとすると、
建設するかどうかに1年半、実際に社内決裁取得に半年、建設着手までたぶん2年はかかるんじゃないかと。

JALはANAのことをまだ上から目線で見ている部分があって、
JALの中には、ANA=所詮ヘリコプター会社という考え方が未だにあるし、
ANAよりも自分達がどうするかという内向きな見方が多い。

だからANAの動きはあまり気にしないし、
JALとしてどうか、JALがどうするべきか、それしか考えられなかったのではと思います。

今回の採用一時中断についても、ANAの動きを見ていなかったわけではないかもしれませんが、
JALとして、慎重に慎重に慎重に慎重に慎重に慎重に判断していた結果だと思いますよ。
(思いっきり皮肉ですが)

まとめ

今回のJALの発表には、個人的にとても失望しています。
先ほども言いましたが、採用が不可能であることはもっと早くからわかっていたこと。

どういう経緯でここまで発表が遅くなったのか、本当に教えて欲しい。

採用が不可能であると認識が出来ていなかったのであれば、もう会社として末期。
社内の意思決定に時間を要したのであれば、センスなさすぎ。

何より残念なのは、就活生が割を食ってること。

みん就やSNSなどをよく見ていないので、今回のJALの発表に対する皆さんのリアクションをよく知らないのですが、
エアラインに勤める人間として、皆さんの意見を是非聞かせて欲しいです。

宜しくお願いします。

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客室乗務員の採用面接官も務める管理人が、一人でも多くの優秀な方に客室乗務員になってもらいたいと思い運営を始めました。直接採用面接や客室乗務員に限らず、エアラインに関することなど気になることをお問い合わせ頂ければ、管理人若しくは現役客室乗務員が回答します!趣味の旅行やマイル、クレジットカードや株式についても書いていきます。